Vol.8

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Vol.8

「高崎は、どうしてこんなにまでして私のパパ活を辞めさせたかったの?私のことなんてどうでもいいのに…。」  高崎は私の隣に座った。 「なんか、お前のことほっとけなくて。」 「ほっとけない?どうして?」 「お前、いっつも悲しい顔してんじゃん。」  私が……?  悲しい顔……? 「何か抱えてる感じがしてさ、助けてやりてーなって、俺の勝手な正義感がはたらいて。とにかく救ってやりたかった。そしたら、クラスの奴らが、お前が毎日違うオヤジと手繋いでホテルに入っていくの見たって騒ぎ出して。これは何としてでも絶対に止めなきゃと思って、この方法思いついた。」  私の知らないところで、高崎はこんなにも私のことを考えていてくれたなんて…。全然気付かなかった。 「あのさ、順番めちゃくちゃになっちまったけど……、谷本、俺と付き合ってよ。俺の彼女になって、パパ活から足を洗ってくれよ。」  衝撃だった。まさか高崎の口からこんな言葉が出るなんて…。信じられなかった。 「私でいいの?同情とかそういうのなら要らないよ。」 「谷本がいい。同情なんかで付き合ってなんて言わねーから。」  高崎は私にそっと口づけた。 「俺じゃダメか?」 「ううん、ダメじゃない。嬉しい…。ありがと。」 「それって、OKってこと?」  私はゆっくり頷いた。  高崎はまた私を強く抱き締めた。 「谷本はもう俺だけのものだからな。知らねーどっかのオヤジとは一切会うなよ。」  私は両腕を高崎の背中に回し、高崎を強く抱き締めた。  体と体がくっついて、とても温かくて心地良かった。  ずっとずっと、このぬくもりに包まれていたい、心からそう思った。  これが…  “幸せ” というものなの……?  
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