咖哩飯

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 沙代は小柄な身体に相反してとんでもなく食いしん坊だ。まさにがっつくといったようすの食べ方は、沙代然としていてなんとも気持ちがいい。それに、心底しあわせそうに食ってくれるから、作ったこっちもしあわせな心持ちになる。  沙代はあっという間に皿に盛った咖哩飯を平らげた。そして、匙を置かぬまま尋ねてきた。 「おかわりはあるのですか?」 「あるよ。あと五人ぶんくらい」 「それを全部いただいても?」  私は苦笑して、いいよ、と答えた。 「なんでしたら鍋ごとだしていただいても、私としては特に差し支えありませんが」  皿でちまちま食えるか、と暗に訴えている。  玄米の入った釜と咖哩の入った鍋をちゃぶ台の上に置いてやると、沙代は釜に咖哩を流しこんで再びもりもり食べはじめた。本当に気持ちいい食べっぷりで、大量の咖哩飯がみるみる減っていく。  そうして、私がひとりぶんを食べるあいだに五人ぶんの咖哩飯をぺろりと平らげてしまった。最初の一皿と合わせると実に六人ぶんだ。いやはや沙代の胃袋はどうなっているのか。  咖哩飯を食べ終えた沙代は、至福の表情を浮かべていた。 「ふう、食った食った。しあわせえ……」  たいそうしあわせそうに言いながら、ぱんぱんに膨らんだ腹をさすっている。 「それだけ食べたら腹が苦しいだろう? 帯を緩めたらどうだい」  すると、沙代の顔がきりりと一変した。 「いえ、帯は緩めません。親しき仲にも礼儀あり、なので」  鍋ごと食べるのも礼儀を欠いているはずだ。しかし、そこは指摘しないでおいた。夫婦仲というのは余計な一言が明暗をわける。
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