蕗の薹、陰に咲く。

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「君らの校章の模様、  “蕗の花”。  ウチの女房に聞いたわ、  ここの卒業生でね…」 さっき壊れた鈴子の校章を、 松堂さんは掌に乗せた。 「『蕗の花の花言葉は“公平”。   この意味よりもキラキラの   輝きだけが気になる   学校ではダメですね』  そない…言うてた…」 「耳が…痛いなあ…」 「…校長先生…耳が痛いのは私です」 普段控え目な担任は 「さっき鈴ちゃんに言われて  反論出来なかった自分を恥じます。   先程の“絹の布団”の言葉、  蕗の薹の花言葉…  胸に刻んでまいります」 顔を上げてそう言った。 「先生…進路を法学部に  変えていいですか?  私、弁護士になる!  私でもなれますか?」 ワッコは松堂さんを 真っすぐに見た。 「なれる!君ならなれる!  他の子も、皆、自分の道を  シッカリいくんや!  なあ、校長」 「ああ、頑張ってくれ。  そうや…鈴ちゃんは何を目指す?」 想定外の質問に 目を丸くする鈴子に代わり 「こいつは“立派な遊び人”に  なれるやろうなあ、ハハハハ」 松堂さんの豪快な笑い声が 窓から爽やかな風を呼んだ。       
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