蕗の薹、陰に咲く。

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当時通っていた高校は、 旧女学校からの私立で、 進学率もさることながら、 “お嬢様学校”と世間から 謳われていて、少し重い校章は “蕗(蕗の薹)の花”。 これに憧れて受験した生徒もいた。 “有名女子校”アルアルで 上場企業の重役や開業医の娘が、 流行のブランド鞄を サブバッグにちょい持ちして ブランド定期入れを当たり前に 電車に揺られていた。 私は公立高校を落選し、 仕方なしに通っていたので、 同じように落選組と仲良くなり ブランド物とは無縁の学園生活。 でも、そんな中で… 「スゴいなあ、その財布、  六万はするやろ?」 落選組の鈴子が指したのは 夏美の財布だった。 夏美だけが、少しずつ ブランド物を持つように なってきていた一学期末。 「あ、うん」 同じく落選組の夏美は 頷いて鞄に財布を仕舞った。 思えば…夏美の異変は この高校一年の初夏から 見えていたのだ。
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