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私の落ち度
「おはようございます」と、2階から降りてきた、20代の背広姿の背の高い、スッとした見栄えの良い青年が笑顔で言った。
「おはようございます」と、心臓がバクバクドキドキと高鳴っている私は、なるべく目を合わせてないでボソボソ言った。
アパートの住人同士のあいさつだ。
本当は住人の顔なんて、知りたくなかった。
都内OLの独身で、収入を考えてマンションは無理だ。
築10年駅まで3分1階角部屋で、一歩裏通りの静かな住宅街の、アパートに引っ越して1か月たった、今は6月だ。綺麗で駅まで近いという魅力で、
1階というのは目を瞑った、、、、。
ひと月前私は、付き合っていた彼に引っ越しを手伝って貰った。
その時私達2人と、先程挨拶を交わした2階の住人の男の人はしばらく鉢合わせる事になった、2階の住人は1階にある自分のポストの鍵が何んとかで、私達の引っ越しの通り道を半分塞いでいた。
男2人は、少し似た感じだ、身なりに気を使い自分に自信があり、相手を見下げるタイプの人種でお互いジャッジしあってたと思う。
私の彼は必要以上にベタベタして、見せつけているように見えた。そのあざとさが可愛いって思った私も脳天気だった。
夜も窓を開けてイチャイチャしていた、たぶん2階に聞こえてたと思う。
1週間もしないうちに些細な事で彼とは別れた。
誰も訪ねてこない、静かな生活になった。
2、3日前暑い夜で、冷房をつけるまででもないと思い、窓を2-3cm開けたまま寝た。
朝、5cmくらい開いていたが、あまり気にしていなかった。
次の日の夜も少し開けて寝たが、寝れないでゴロゴロしていると、
窓の外に人の気配がして、開いている窓をスッーと1-2cm開けてた、、、音がした、、、、人の息遣いもする。
咄嗟の恐怖には、人間は声が出なくなるものだと初めて知った。
心臓も口から飛び出てバクバクドキドキした、窓を閉めに行けない、気配がする。
恐怖で体は硬直している、息を殺しているつもりでも微かに息をしている音がする、心臓はバクバクドキドキと高鳴り合っている、自分の心臓の音と僅かな息の音がうるさかった、10分くらいで気配がなくなり、僅かな足・音が、、アパートの2階に上がって行った。
私がいる事を知って覗きにきたのか、いるかどうか確認しにきたのか、何が目的かわからないが、殺されても、レイプされても、おかしくない状況だった。もしかして、私の一挙一動をずっと監視していたのだろうか。
前のアパートは、3階建の2階の真ん中の部屋で、上下左右の住人達の行動が一挙一動、音でわかった。その音が精神的苦痛でどこかで音がする度、耳は其方の方に全神経を集中して、ああ上の人帰ってきた、隣シャワーうるさいとか。
自分の細やかな城が、音の洪水で溢れていた。
最近は引っ越した安堵感で、板伝いの音の事はすっかり忘れていた。
朝まで起きていた。
恐怖で体が震えて寝れなくなった。
私がここに住んでいる事を知ってっいるアパートの住人は2階の男の人だけだ。
後は誰が住んでいるのか会った事もない。
さっきの笑顔が気持ち悪い。
なにも知らなければ、好青年だ。
誰にでも心の闇があるが、知りたくなかった。
なぜ私なのか、男に甘い隙だらけの軽い女に見えただろう、条件反射で恐怖が思い出されて、心臓がバクバクドキドキした。
今日なんとか次の引っ越し先決めようと、駅まで急いだ。
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