それは流れて

3/3
前へ
/3ページ
次へ
*  『レンタルなみだ』の仕事は泣けない人の代わりに泣いてあげること。私の感情は抜きにして、ただその人に同調して涙を流す。それが仕事。嗚咽しながら泣く人や静かに泣く人、様々いるけれどみんな泣き終わったあとにはいい顔になる。 「さて、そろそろかな」  最近泣くのを手伝った若者が成仏する日。あの大きなドアを通れば輪廻の輪に加わって無事に成仏される。その背中は小さいけれどしっかりと伸びていて頼もしかった。うん、良かった。良かった。 「いつかまた、泣けなくなったら。いつでもご利用をお待ちしております。けどそれまでは」  ――どうか健やかに、毎日を。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加