第7話 春の夜の夢1

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第7話 春の夜の夢1

   ***      泉が宿泊した部屋はスティーブが取ってくれた。 『これも現実逃避だと思って、楽しんで』  そう言われてチェックインした泉を待っていたのは、スイートルームだった。パーラールームと寝室はどちらも豪華でキラキラで、バスルームはジャグジーで。 (こんな素敵な部屋で二泊もできるなんて……)  泉はお嬢様気分を味わいながら、昨夜はふかふかのベッドで眠ったのだった。  蒼佑の部屋もまた、スイートだった。泉とはフロア違いだが、部屋の内装はさほど変わらないようだ。 「こっちも素敵な部屋……」  窓の外にはサンディエゴの夜景が広がっている。都会の人工的なきらめきが今はただただ美しく見える。  バスローブをまとった泉は、寝室の窓からの景色をうっとりと眺めていた。  バスルームからはシャワーの音が聞こえてくる。その音の主はもちろん蒼佑だ。 (今日初めて会った人とこんな風になるなんて……)  泉は自分の大胆さに今さらながら驚いている。もちろん、こんなことは生まれて初めてだ。  今まで、悠希としか関係を持ったことがないのだから。  どっどっどっと、心臓が早鐘を打っている。  学生時代も、そして就職してからも、真面目な生活を送ってきた。  刹那的に、時を雑に削るように生きたことなど一度もない。  これは、最初で最後の火遊びだろう。 「……一度くらい大やけどしてみたっていいよね」 「――やけどがどうしたって?」  後ろから、するりと腰に手が回った。ボディソープの香りがふわりと鼻腔をくすぐった。  見上げると、きれいな瞳が目に入る。焦げ茶の光彩の奥には、熾火のように赤い芯を抱いた情欲が見え隠れしていた。 「……本当にやけどしそう。蒼佑さんの目を見ていたら」  洗ってざっと乾かしただけのラフな髪型が、彼の美貌を際立たせている。  蒼佑はふっと笑うと、泉の頬に手を添えた。 「――泉のほっぺはもちもちで柔らかいな。……食べたくなる」  蒼佑は後ろから覆い被さるように頬にくちびるを押しつけてきた。ちゅ、ちゅ、と、何度も。  目を閉じてされるがままになっていると、まるで―― (クリムトの『接吻』みたい……)  体勢だけで言えば、あの有名な絵画のようであると……言えなくもない。  頬を啄んでいたくちびるは、いつの間にか泉のそれを捉えていて、身体も向かい合わせになっていた。 「んっ……」  緩んだ口元からぬるんと舌が入ってくる。ほんのりとミントの味がした。  キスを続けながら、蒼佑は窓のカーテンをきっちりと引き、そのまま泉を近くのベッドへと誘導した。  泉の膝がベッドの縁へ当たる。と同時に、身体をゆっくりと倒された。二人同時にマットレスの上に乗り上げると、そのまま枕のところまで移動する。  その間に、蒼佑は泉のローブの紐を解き、前を寛げた。当然ながら中は真裸だ。腕を抜いてしまえば、一糸まとわない姿になる。  蒼佑よりも先にシャワーを浴びた泉は、全身を念入りに洗ったので、汚れているところはない……はず。 「ほっぺだけじゃなく、身体も柔らかそうで……きれいだ」 「蒼佑さんも……きれいよ?」  彼はわずかに目を見張る。  キスをされて押し倒されて紐を解かれて――蒼佑からそうされている間、泉はされるがままになってはいなかった。  スムーズに流れるようにさりげなく動いて誘導したし、泉だって蒼佑のバスローブの紐を解いていた。  引き締まった筋肉に覆われた肉体が、はらりとはだけたローブの中から現れる。きれいな顔に勝るとも劣らないきれいな身体だ。  見事に割れた腹筋の下では、肉茎が兆しを見せていた。 「……いつの間に」  蒼佑がしてやられたといった表情で、ローブを脱ぎ捨てた。 「ふふ……大成功」  翻弄されてばかりでは面白くないから。  どうせなら、一緒に気持ちよくなりたい。 「いたずら娘には……こうだ」  蒼佑は泉の両手手首を一緒にして掴むと、彼女の頭の上の枕に押しつけた。  そのまま胸の膨らみの天辺に、じゅっと吸いついた。 「あっ」  乳暈をまるごと呑み込んでしまいそうなほど吸われ、身体がびくん、と浮いた。口腔内で先端を舐られ、全身が痺れる。尖った舌先が乳嘴をぐりぐりと拉ぐ。 「っ、ゃ……」  泉が何か仕掛けようにも、両の手首を押さえつけられていて叶わない。 「――あぁ、硬くなった」  散々嬲られた後に解放された先端は、芯を抱いて粒立ち、いやらしく赤身を増していた。  蒼佑は泉の手首を拘束したまま、空いた手で彼女の肢体の稜線を辿った。  触れられた部分が熱を持ち、徐々に全身が熱くなる。  指先が和毛に到達した時、泉の下腹部の奥がきゅんと疼いた。  羞恥と期待で、首筋がぞくぞくする。  蒼佑の指が花唇を割り開き、谷間につぷりと沈み込む。くちゅ……と、ぬめった音がしたかと思うと、確かめるようにそこをぬちぬちと幾度もタップされ、秘処が蜜液を溜め込んでいたのがはっきりと分かった。 「すぐにでも挿入(いれ)られそうなほど、濡れてるな」 「んっ、や……、もっと、触って……っ」  すぐになんて挿入ないで。もっともっと弄んで、その指で。  泉はいやいやとかぶりを振る。 「……泉は見た目と違って貪欲だ」  蒼佑は喉の奥で笑いを殺し、そして泉の脚を開いた。  ぱっくりと暴かれた襞のあわいから、とろりと愛液が流れ落ちた。
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