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「なら櫻木さんは、『Carina』の広報を担当されてるんですか?
私も好きで、よくあそこの洋服買いますよ!」
女の子同士での自己紹介タイムに突入し、それぞれの現在やら仕事やら結婚観、さらには好みの男性のタイプについてほろ酔い状態のまま大いに語り合った。
ちなみに篠崎さんは実家が経営する小さな八百屋さんを手伝っているそうなのだけれど、ゆくゆくは結婚して家を出て、あくせく働くことなくセレブライフを送りたいと思っていたらしい。
だけど今日の私の発言を耳にして、その計画に疑問を感じるようになったとのこと。
よくよく考えてみたら、家でじっとしているのは性に合わない。
だからおそらく、専業主婦には向いていないというのがその主な理由である。
「なのでそもそもの話になりますが、今後はセレブ狙いのお高いコースじゃなく、一般向けに絞って頑張った方がいいかもですねぇ」
皿に綺麗に盛り付けられたミニサイズのケーキにブスリとフォークを刺しながら、ふぅと小さく息を吐く篠崎さん。
さらりと彼女の艶やかな黒髪が、揺れた。
はじめて目にした時の彼女の印象は、可愛いけれど恐ろしい毒女子。
見た目は変わらないはずなのに、今の篠崎さんの方が私にはずっと魅力的に思える。
「私も、そんな感じです。
どうせならお金持ちがいいかなと思って奮発してこちらのパーティーに申し込んでみたものの、今日参加されてる男性達と話してみて分かったんですが。
……なんかこういうの、私には合わないなと」
明るい髪色のショートカットがよく似合う、今時女子といった雰囲気の女の子も、ワインの入ったグラスを片手に告げた。
ホント、それ!
合わないと感じながら、無理をしてまでお金持ちと結婚したところで、そこにきっと私達の幸せはないのだ。
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