昨日の敵は

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「ここのホテルのビュッフェ、何を食べても美味しいですが、ローストビーフが特におすすめですよ!」  取り皿を手に取り、テーブルに並んだばかりのローストビーフを慣れた手付きで器用に取り分けながら彼女は続けた。 「実はこのパーティーへの参加は、三回目。  ハッピー・ブルーバードには登録してから、もうすぐ一年が過ぎようとしています。  自慢出来る事じゃないけど、もはや婚活のプロです。  だから分かんない事があれば、なんでも私に聞いてください」    ……なんて、頼もしい。  そして、めちゃくちゃいい子! 「ありがとうございます。  こういう場ははじめてだから、勝手が分からなくて。助かります」  お互いスマートフォンを取り出しての、連絡先の交換。 「いっそグループ、作っちゃいます?  他にもひとり、情報を共有し合ってる婚活仲間がいるので」  篠崎さんは第一印象とは異なり、かなりサバサバ系の女性みたいだ。  婚カツという戦場で少しでも優位に闘うため、控えめな女子を演じていたという事なのだろう。 「よろしくお願いします。  良かったぁ!これからの事を思うと、実はかなり不安だったので」  ヘラヘラと、笑って答えた。  すると遠巻きにそれを見ていた、既に今日の闘いを私達同様投げたらしき女の子が声を掛けて来た。 「あのぉ……私もそのグループに、入れて貰っても良いですか?  婚カツって華やかに見えて、かなり孤独な闘いだから、仲間がいると思うと心強いなと」  結局篠崎さんが中心となり出来た婚活グループの連絡先には、私も含めて5人の参加希望者が集まった。  理想の結婚といっても、形は人それぞれ違うのだ。  皆が皆、家庭を守る良妻賢母になりたいワケじゃない。  ここにいる女子は全員ライバルだと思っていたが、もしかしたら戦友に近い存在なのかもしれない。
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