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結婚相談所のコーディネーターとして働いているというのに一部の心ない社員達からは、縁談クラッシャー兄弟なる大変不名誉なあだ名まで付けられる始末。
まったくもって、理不尽かつ不本意な話である。
しかし人と接するのは好きだし、結婚が決まり、幸せそうに満面の笑みを浮かべるカップルを見るのは嬉しい。
だから親の家業を継いだだけではあるものの、これは俺にとっての、天職みたいなモノなのだと思う。
とはいえ何かトラブルが発生したりしない限りはする事がないという、今日みたいな日は正直とても退屈だ。
だから女性スタッフ達の目を盗み、隙をみてこっそりパーティー会場へと忍び込んだ。
和気藹々とした雰囲気の中、弾む会話。
でもここは、そう。……弱肉強食の世界だ。
だからそんなのはあくまでも、表現上だけの話だと分かってはいるけれど。
それでも一組でも多くのカップルが誕生したら良いなだなんて、いつものようにほんわかした気分で考えていたのだが、そこで思わぬ人物を発見してしまった。
思わぬ人物というのは、そう。
俺がこの一週間、共に過ごしたあの楽しかった時を何度も思い出してにやけ、弟に気持ちが悪いと罵倒されながらも再会を望み続けてきたあの女性だった。
最初彼女の姿を見付けた時は、純粋にただ嬉しかった。
しかし自身の置かれている状況を思い出し、焦りが生じた。
だって俺は、結婚相談所で働く人間で。
そして彼女は結婚相手を求めてやって来た、いわゆる婚カツ女子なのだ。
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