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いくら好みのタイプだとしても、さすがに彼女のパートナー探しの邪魔をして、自らを売り込むような真似は出来ない。
そんなの、会社の信用に関わる。
そんな事をしたのがバレたら、我が社の社長である母親にマジで殺されかねない。
ということは、つまり。
……俺が可愛いなと感じ、この一週間の間ずっと再会を望んでいたあの子の結婚相手を探すための、手助けをしなければならないという事になる。
なんなんだ?この状況は。
本当に、サイアク過ぎる!
しかし考えようによっては、再会出来ただけラッキーと言えなくもない。
だって本当にサイアクなのは、彼女ともう会えないまま、あれっきりになってしまう事だと思うから。
基本的に俺はポジティブな性格で、何でもプラス思考に持っていくタイプの人間なためすぐに気持ちを切り替えた。
とりあえず、今の自分に出来る事を考えてみる。
うーん……どうしたものか?
するとそのタイミングで、こっそり会場に忍び込んでいたのをスタッフの佐藤さんに見付かってしまった。
カツカツと、優雅ながらも素早い動きで俺の方へ歩み寄る彼女。
ニコニコと表面上は笑っているが、目の奥が笑っていない気がする。
だけどそれに怯むことなく、俺もにっこりと笑顔を返した。
「佐藤さん。今日の参加者一覧を、見せて貰っても?」
公私混同も甚だしいが、なりふりなんか構っていられない。
俺の問いに佐藤さんは、少し戸惑ったように視線を泳がせた。
だけど再度微笑み、無言のまま催促すると、彼女は諦めたようにふぅと小さく息を吐き出した。
そして脇に抱えていた、参加者名が記された一覧の入ったクリアファイルを俺に手渡した。
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