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そんな風にひとり策略を巡らせていたら、いつの間にか彼女の側には篠崎さんの姿が。
演技をやめて、いきなり素を晒す篠崎さんに最初春呼さんは相当驚いた様子だったが、すぐに意気投合したようだ。
そしてふたりの周りには、今日の闘いを投げたらしき女性のお客様達がちらほら集まり始めた。
俺が母親の会社を手伝うようになり、既に10年以上経過している。
だけどこんな展開は、本当に初めてだった。
これまでこういったパーティーの場では、表面上は仲良く会話をしていても、水面下ではいつも同性同士、火花をバチバチ散らし合っていて。
そして俺もそれが当たり前だと思い込んでいたから、特に改善する必要もないと考えていた。
だけど別に女性達は、皆が皆敵同士というワケじゃない。
不安に思うこともあれば、色々とストレスを溜めることもあるかもしれない。
それを共有し、発散出来る戦友のような相手がいたら、さぞかし心強いに違いない。
何らかの形で今日の出来事を、生かせないだろうか?
これは母親と遼河にも、報告案件だな。
それにしても。……やっぱりあの子は、すごい。
どんな状況でも、楽しもうとするところも。
そしていつの間にかそれに、周囲の人間を巻き込んでしまうところも。
篠崎さんだって春呼さん相手じゃなければきっと、あの場であんな風な行動に出たりはしなかったに違いない。
だってこれまでどれだけうちのスタッフが、素の方が魅力的ですよと諭しても、ガンとしてスタイルを崩さなかったのだから。
和やかな雰囲気に包まれた、会場内。
もう今日はこれ以上何も起こらないだろうと考え、トラブル処理要員の俺はこっそり控え室に戻ろうとしたタイミングで。
……再び春呼さんが、やらかした。
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