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無駄なときめき~side春呼~
お金はあるに越したことはないけれど、それが全てだとは、私は思わない。
子供の頃、母親に読んで貰ったおとぎ話の最後はいつだって、『お姫様は王子様と、末長く幸せに暮らしましたとさ』で終わっていた。
だけど実際の人生は、結婚してからの方がはるかに長い。
めでたし、めでたしなどと言われても、平民からプリンセスに成り上がったところで、姑による理不尽で陰湿な嫁いびりが始まらないとも限らない。
現実世界は、厳しいのだ。
私は今日、結婚相手はゲット出来なかったけれど、心強い婚カツ仲間を手に入れた。
男性陣の恨みがましい視線が多少気にはなったが、なんだって楽しんだもん勝ちでしょ?
その上で運良く自分好みの、私だけの王子様を見付けられたら、万々歳だ。
選り好み?そんなの、しまくるに決まってる。
見せ掛けだけのハッピーエンドなんて、絶対にお断りだ。
それならひとりで生きる、結婚以外の人生を私は選ぶ。
そして婚活パーティーというよりは、女子会みたいに大盛り上がりして調子に乗った結果。
……私はワインを飲み過ぎ、酔っ払って、とんでもない醜態を晒す事になる。
***
「あの……櫻木さん、大丈夫?
そろそろ、やめた方が……」
さすがに少し飲み過ぎたのか、ちょっとだけ足元が覚束なくなった私を見て、心配したように篠崎さんが言った。
だけど阿呆な私はヘラヘラと笑い、大丈夫大丈夫と答えると、さらなるワイングラスに手を伸ばそうとした。
しかし、次の瞬間。
ボーナスが出た際に大枚を叩き、清水の舞台から大ジャンプする気で購入した、真っ赤なソールが魅力のハイヒール。
それをテーブルの脚に、思いっきり引っかけた。
その上無様にも床に前のめりに、ズダーンとスッ転んでしまったのだ。
かろうじて顔だけは死守したものの、右足の膝に激痛が走る。
どうしよう?……恥ずかしい、死にたい!!
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