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それに驚き、大きく見開かれた瞳。
一瞬の間の後、彼は私からフイと顔を背け、耐えられないとでも言いたげにまたしてもプッと吹き出した。
ぐぬぬ……恥ずかし過ぎる。
「膝のところ、やはり軽く消毒だけしておきましょうか」
にっこりと穏やかに微笑む、桐生さん。
そこまでたいした怪我ではないものの、じんわり血がにじみ出てしまっているため、彼の言うように少し手当てはしておいた方が良いかもしれない。
しかしこの流れだとやはり、私が自分でするのではなく、彼がしてくれるという事なのだろうか?
戸惑い、反応に迷う私。
すると桐生さんは私の困惑に気付いているのかいないのか、笑顔のまま告げた。
「このままでは出来ないので、膝辺りまで裾をまくり上げて頂けますか?」
既に消毒液をガーゼに染み込ませ、準備万端らしき彼を前に、動揺しながらも慌ててワイドパンツの裾をグッとまくった。
ショートタイプのストッキングを履いているため、剥き出しになった肌。
……ケチらずにきちんと永久脱毛をしておいて、本当に良かった。
すると彼は失礼しますとだけ言って私の足首に手をやり、少しだけ膝を曲げさせると、そのまま傷口にガーゼで優しく触れた。
流れるように華麗な一連の動作は、お姫様にガラスの靴を履かせるあのおとぎ話のワンシーンを思わせる。
自分でもびっくりするぐらい、心臓が早鐘を打つ。
おそらく今の私の顔は、アルコールのせいだけではなく真っ赤になっているに違いない。
「すぐに終わるので、しみるとは思いますが、少しだけ我慢して下さいね」
私がこくんと小さく頷くと、彼はまたクスリと笑った。
王子様じゃん。……こんなのもう、完全に王子様じゃん!
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