地雷地帯

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 しかしそこで、ふと気付く。  そう言えばあの男の名字って、確か早乙女(さおとめ)だったよなと。  『りょうが』なんていう名は珍しかったけれど、私の勘違いで、『別りょうが(・・・・・)』だったのかも。  それにふたり、ぜんっぜん似てないし!  そう思い至り、クスクスと笑いながら告げた。 「あぁ……なぁんだ。一瞬、私の知り合いかと思いました。  でも彼の名字、桐生さんとは違ったから、きっと別人ですね」  すると桐生さんは少し驚いた様子で瞳を見開き、それから爽やかな笑顔で言った。 「あぁ。ふたりは、知り合いなんですね。  弟とは、名字が違うので。  うちね、こんな仕事をしてるからちょっと言いづらいんですが、実は両親が離婚してるんですよ。  なので俺は、父方の。  遼河は母方の、氏なんです」  なんてこったい!  ……地雷しか、埋まってない。  頭を抱える、私。  それを見て彼は、困ったように小さく笑った。 「えっと……遼河と過去に、何かありました?  アイツ高校時代、かなり荒れてたから」     これは、もしかして。  ……私もあの糞みたいなハーレムの、住人だったと思われている?  それだけは、嫌だ。絶対に、嫌だ。    それなら百万歩譲って、暴力女だとバレる方がまだマシ! 「確かに彼、かなり遊びまくってましたよね。  あの……大変申し上げにくい、お話なのですが。  すみません!!」      真実を告げるべく、座ったまま、ガバッと大きく頭を下げる私。  それにぎょっとした様子で、彼はキキーッと急ブレーキを踏んだ。  そして車を路肩に停めると、こちら側を振り返った。   「えっと……とりあえず顔を、上げて下さい。  でもまさか、アイツとマジでそういう(かん)け……」  やはり、誤解されていたか。  ……彼が、言い終わるより早く。  食い気味に、全力で否定の言葉を口にした。 「違います。断じて、そういう関係ではありません!!」
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