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結婚相談所の、正しくない利用法~side春呼~
「お疲れ様です、春呼さん。
昨日は、どうでした?」
その翌日の、月曜のお昼休み。
食堂で唐揚げ定食を注文し、出来上がりを待って列に並んでいたタイミングで安里ちゃんに声を掛けられた。
彼女の持つトレイの上には、ボリューム控えめなパスタと、サラダのセット。
それで本当に足りるのかと、大喰らいで食いしん坊な私は、他人事ながらいつもちょっぴり心配になってしまう量だ。
「安里ちゃんも、お疲れ。
うーん……。どうだろう……?」
本気で答えに惑い、曖昧に返事をした。
すると彼女は不思議そうに、こてんと小首を傾げた。
「いやいや、私に聞かれても。
けどそういう風に、迷いながら答えたってことは。
……何らかの手応えは、あったって事ですよね?」
さすがは恋愛百戦錬磨の、あざと可愛い女子代表。
目敏い。そして、鋭い。……あと、ちょっとこわい。
「あったと言えば、あった……かなぁ」
この子相手に隠し通せる気がしなかったし、私自身いまの状況を持て余し、誰かに聞いて欲しかったというのもある。
だから素直に、答えた。
「どうでした?
やっぱりお金持ちの、素敵男子ばっかりでした?」
期待にキラキラと輝く、まるで宝石みたいな瞳が眩しい!
「素敵かどうかの感じ方は、人によるかも。
好みだって、まちまちだと思うし」
歯切れの悪い、私の回答にしびれを切らしたのだろう。
彼女はさらに一歩前に出て、私の顔を上目遣いに見上げた。
反射的に、一歩後退る私。
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