知らねぇよ!!

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 ほら、俺って今工場で働いているだろう?  ……うん、働いているんだよ。  所謂物流作業ってやつなんだけどな、やってることの単純さに反して、内容はかなりややこしいんだ。  要は外から来る材料を工場の各セクションへ運び、それらのセクションから送られてきた品をまた客へと届けていくんだが、その際に品や届け先に不備がないかの確認をする必要がある。何処から来て何処へ行く物なのか、それは今日の予定の中にある物なのか、なければ本来いつ来る筈だったのか、そもそも中身はちゃんと伝票通りの中身なのか……。荷物の量が想定以上になり、当日の予定では運びきれない、なんてことも珍しくない。  携わる人間全員が間違いなく作業していれば、なんの問題も起こらないんだが、まぁ実際そんな上手くいくことの方が稀でな、一日に来る荷物のおよそ1/3は、経緯に不備があって、一旦移動保留とすることが殆どなわけよ。  保留となった荷物は一体どうするのか。  作業場には置いておけない。荷物は次から次へとやってくるから、わからないものをそのまま置きっぱなしにしていたら、足の踏み場がなくなっちまう。  だからうちの工場では、保留になった荷物は、敷地の端に設置されている巨大倉庫の中に一旦放り込むことになっているんだ。元々資材の類を置いておく場所だったんだが、この不景気で機械がいくつか売りに出されてな、結果倉庫に保管するほどの量が必要なくなって、使わないゴミなんかをいくつか放り込むだけの物置にしかなってなかったんだ。それが今では、昼夜問わず中は満杯のまま。当日の荷物を出したと思ったら、翌々日の荷物を放り込む。そんなわけで奥に置かれた品を取り出すだけでも一苦労する状態でな。  つーかさ、機械を売りに出して倉庫を使わなくなったのに、荷物がその倉庫一杯になるまで出てくるってのもおかしな話だよな。実際機械は昼夜問わず稼働するようになって、土日まで必死に働いてるから、それ自体分からないでもないんだが、じゃあなんで機械売り飛ばすんだよ、忙しくなるなら売ることなかっただろ、って思うんだよなぁ。繁忙期の忙しさで言ったら以前よりてんてこ舞いになるくらいだ。機械だけじゃなく人手も減らしたんだから、当然だよな。  ……ん? あぁいや、まぁ聞けって、話はここからだ。
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