私の小さな秘密

2/24
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
 桃花ちゃんの家には、もう他の友だちも来ていた。 「わー、すごい! かわいい!」 「音楽も流れるし、音も出るんだよ」 「え、本当!?」 「わ! 声も出る!」 「本物みたい!」 「私も持ってみていい?」  にぎやかにしている中で、私もそう言ってみる。自分では絶対買ってもらえないような物だから、せっかくなら触ってみたい。 「いいよ。あ、でも順番ね、順番」 「うん!」  順番だろうが何だろうが、一番新しい変身グッズに触れるんだ。嬉しいに決まってる。  わくわくと私は待つ。  みんなすごく嬉しそうで、順番を待っている間もなんだか楽しい。 「はい、どうぞ」 「ありがとうっ!」  ようやく渡された変身グッズは、前の子がしっかり握っていたせいかちょっぴりあたたかかった。 「ボタン押してみなよ」  桃花ちゃんに言われて、ボタンを押してみる。テレビでやっているのと同じ音楽が流れて、本当に変身しているみたいだ。私は思わず変身ポーズを決めてしまう。 「やっちゃうよね。でも、本物みたいに服が変わらないのが残念なんだけど」  桃花ちゃんが言って、みんなが笑う。  最後に来た私で、一巡りしたらしい。みんな満足げな顔をしている。  そうして一息ついたところで、一人が気付いた。 「あ、それ、去年のやつだよね」  視線の先には、去年やっていたシリーズの変身グッズがある。 「もう古くない?」  それを見て、私は言ってしまった。 「そんなことないよ」  桃花ちゃんがムッとした声を出す。 「でも、お母さんが捨てなさいとか、言わない?」 「そんなこと言うわけないよ。新しいのあるからって、去年のが嫌いになるわけじゃないもん。去年のだって面白かったでしょ」 「うんうん。最終回すごかったもんね」 「葵衣ちゃんはもう嫌いになったの? 前、好きだって言ってなかった?」 「……それは、そうだけど」  そこまで言われて、やってしまったと思った。さっきまで盛り上がっていた空気が、下がってしまっている。しかも、みんなが私を見ている。 「ええと、私もまだ好きだよ!」 「本当?」 「本当だよ」  嘘じゃない。私も最終回がすごく面白いと思って、終わってしまうのがさみしかった。新しい予告もわくわくするけれど、それ以上にさみしさの方が大きかったのに。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!