私の小さな秘密

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「ねえねえ、聞いて! 誕生日に新しい変身セット買ってもらっちゃった!」 「え、本当!?」 「すごーい」  桃花(ももか)ちゃんの言葉に、友だちがみんなうらやましそうに歓声を上げている。私も、その一人だ。  休み時間に教室で、好きな物の話をしているのは楽しい。 「いいなあ、だってまだ発売したばっかりでしょ? 誕生日が新シリーズ始まってすぐってトクだね」  そうは言うけど、誕生日になっても私の家だったらおねだりしてもきっと難しい。もう四年生なんだから、そんなものいらないでしょ? とか言われてしまいそうだ。  本当にいいなと思っていると桃花ちゃんが言った。 「でしょ! 今日遊びに来る? せっかくだから、一緒に遊ぼうよ!」 「いいの?」 「私も使わせてもらっていい?」 「うん! でも絶対壊さないでね。大事なものなんだから! だって、買ってもらったばっかりなんだもん。葵衣(あおい)ちゃんも来る?」 「行きたい!」  葵衣ちゃん、と自分の名前を呼ばれて私は答えた。  小学校から帰って、ぴかぴかのマンションの一室にある自分の部屋に荷物を置いて、出ていく前に私はお母さんに声を掛けた。 「桃花ちゃんの家に行ってくるね!」 「行ってらっしゃい。ちゃんと六時までには帰って来ないとダメだよ。ランドセルはちゃんといつもの位置に置いた? 放り出したりしてない?」 「ちゃんと置いたよ」 「そう? ならいいけど。気を付けて行ってきてね」 「わかった。行ってきます!」  まだ何か言いたそうなお母さんの言葉をさえぎって返事をした私は、急いで家を出た。今からお母さんが私の部屋にチェックしに行くかもしれない。  大丈夫。ちゃんと片付けてあるはずだ。ランドセルを放り投げたりはしていないし、床に置きっぱなしにもしていない。  お母さんが怒るようなことはしていない。  私は何かを振り切るように走って、桃花ちゃんの家へ向かった。
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