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「今や大学全入時代だぞ。ってか星野、じゃなくて飯田は就職組なのか」
「意外だろ」
「お前と交換してやれよ」
翌日、保健委員の当番で待機している間、相方の仁科和希に昨日の出来事を話した。男の俺からみてもきれいな顔をしているこいつから辛辣な言葉が飛び出すとちょっとびっくりする。
「わかってるよ、俺だってそうしたいけど唯美が嫌だって」
「なんで」
「さあ」
「でも大学に対して憧れは持ってるみたいなんだろ。理由聞けばいいだろ」
「……いやなんか聞きづらくて」
「はあ?」
「3か月前までクラスは同じでも赤の他人だったんだぞ。それを家族になったんだから何でも打ち明けろって言えるか?」
「確かに言えないな」
同じ屋根の下で暮らし始めて約3か月。何とか名前で呼び合って、家でもちょっとした会話はするけどまだお互いの気持ちに踏み込めてはいない。
俺がヘタレってわけじゃなくて、唯美が壁を作っている……んだと思う。なんとなく俺と父さん、そして母さんとなった星野さんとも一定の距離を保っている。そんな気がしていた。
「じゃあこれを機会に距離詰めてみたら?」
「はい?」
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