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「撫子? 今日泊まるところはどこだ?」
「……」
「おい、寝るなよ!? 」
「……ねないよー…」
まずいな。今にも寝そうだ。
先にどこに泊まる予定だったのか聞いておくべきだった。
しかし、チェックを済ませた店に、いつまでもいる訳にはいかない。
俺は撫子を支えて、店の外に出ることにした。
昼間は春の陽気だったのに、夜はまだまだ冷え込みが厳しい。
撫子は、あの時買ったグレーのワンピースに白のカーディガンを羽織り、その上からくすんだピンクの薄いコートを着ている。
春らしい装いだが、いつも着ていたダウンコートと違い、かなり寒そうだ。
今は酔いが回っていて寒さを感じないかもしれないが、早く室内に入らないと風邪をひいてしまう。
「おい! 起きろよ。
どこに泊まるかだけでも言ってくれ。
送るから」
「……あそこ…」
そう言って指差した先は、ネットカフェだった。
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