ホワイトデーの一夜 side真

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…そう思ったはずなのに、次の瞬間、俺は撫子の唇に噛み付いていた。 「んっ」 撫子が甘い声をあげる。 その声をも飲み込み、俺は撫子の唇を貪り続ける。 だめだ。 離れろ。 俺の理性はどこへ行った? 唇を離し、額と額をつけたま、至近距離から撫子の目をのぞき込む。 撫子の瞳に宿る欲望の影を見た瞬間、俺の理性は完全に吹き飛んでしまった。 お互い初めてのはずだった。 にもかかわらず、欲望の赴くままに、相手を貪りあった。 自分にこんな欲望が存在すると思わなかった。欲望を抑えつけているとも思っていなかった。 撫子に対して、好意は持っていた。 ただそれが、恋愛感情かと聞かれたら、違うと答えるだろう。 幼馴染として、妹の親友として、大切な存在であったことは事実だ。 そんな彼女に対して、自分が欲情するとは思ってもみなかったんだ。
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