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「そう。もう、場所は押さえたって。
店をやるなら、家族が手伝える環境じゃないとダメだって。
……私ね、何もかも自分でやることしか考えてなかった。お金貯めて、自分でお店を出す!ってずっと考えてた。
でもそれは……私が私の居場所を作るためだけだったんだと思う」
「居場所…?」
「高校の時だったと思う。
お父さんに言われたの。
『お前はいずれ家を出るんだから、好きにしていい』って。
お父さんにしてみたら、桐野屋に縛られることはない。自由に好きな事をしていいって言いたかったのだと思う。
でも私は、桐野屋には私の居場所がないって言われたんだと思ったの。
あの頃、弓子さんが同居することになって、赤ちゃんも生まれる頃で、その言葉を突き放すように感じたのね。
……今考えてみたら、そんなわけないのにね」
「……」
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