俺のもの side真

16/24
前へ
/484ページ
次へ
「だから、どんな遠くの美術館に勤務することになってもいいから、学芸員になろうと思った。そこが、私の居場所になれば、私はその地で認められた人間になれるんだって、そう思ったのよね」 「……」 「……でも、それは叶わなかった。 それなら私だけのお店だ! 今度こそ、そこを私の居場所にするぞ! って、思った。 それが和小物カフェの夢の始まり。 ……自分の居場所にこだわってただけなの、私」 「撫子……」 俺は、彼女の何を見てきたのだろうか。 彼女自身の口から発せられる夢の、その奥にあるものを何故見ようとしなかったのか。 いつもパワフルに夢を語る彼女を、強い女性だと思ってきた。 いや、決して強くないわけじゃない。 信念を持って生きていると思う。 だがその根本は、自分の居場所が欲しいという、寂しさを隠すためのものだったのだ。
/484ページ

最初のコメントを投稿しよう!

558人が本棚に入れています
本棚に追加