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「だから、どんな遠くの美術館に勤務することになってもいいから、学芸員になろうと思った。そこが、私の居場所になれば、私はその地で認められた人間になれるんだって、そう思ったのよね」
「……」
「……でも、それは叶わなかった。
それなら私だけのお店だ!
今度こそ、そこを私の居場所にするぞ!
って、思った。
それが和小物カフェの夢の始まり。
……自分の居場所にこだわってただけなの、私」
「撫子……」
俺は、彼女の何を見てきたのだろうか。
彼女自身の口から発せられる夢の、その奥にあるものを何故見ようとしなかったのか。
いつもパワフルに夢を語る彼女を、強い女性だと思ってきた。
いや、決して強くないわけじゃない。
信念を持って生きていると思う。
だがその根本は、自分の居場所が欲しいという、寂しさを隠すためのものだったのだ。
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