死神の口説き方

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 1年前に『死神働き方改革』が実施されたせいで、俺はなぜか出世しエリート死神になった。  死の匂いを嗅ぎつけ、大鎌を振り回して魂を狩るアクティブさが好きだったのに、改革の要が『4レンタル店』導入で、俺はデスクワークを強いられている。    エリート死神だけが店長になり、この4レンタル店を運営・管理していく。  何をレンタルするか?  ざっくり言えば、人間の余命だ。  ここに来る客は、死が間近に迫っている待ったなしの人間だ。  客の人間自らサイコロを振って、余命を決める。  死神のサイコロには、秒、分、時、日、月、年の文字が刻まれていて、秒が出れば余命は4秒、分ならば4分となる。  レンタルした時間はきっちり返して貰うが、本人からは無理だ。  余命が尽きて死んだ後だから。    身内がいるなら身内から、いないなら友人から、友人もいないなら……袖振り合うも多生の縁だろう的な奴、そこは俺の采配に任せておけ。  貸したものは返して貰う、これは当たり前だからな。  余命が与えられるんだ、感謝してもバチは当たらないだろう。  秒が出たら人生に懺悔しろ。  分が出たら人生に感謝しろ。  時が出たら贅沢三昧、日はやりたい放題か。  月はやり残した事をやって、年は──まだ誰も出していない。  1年間のデータ分析結果だが、要るのかこれ?
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