死神の口説き方

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 朝は『4レンタル店』の掃除から始まる。  店の呼び方は、4レンタル(フォーレンタル)でも4レンタル(よんレンタル)でもいいが、俺は4レンタル(死レンタル)と、雰囲気を大切にしている。  外回りの大鎌ぶん回しは大胆さが必要だったが、4レンタル店の運営・管理には斬新なアイデアが重要だ。  全国44店舗展開中の4レンタル店、顧客ニーズに応えなければ、ライバル店に負けてしまう。  雰囲気作りも大切なのだ。  客の満足いく余命の過ごし方が、俺の評価を上げるらしい。  過ごし方ねぇ……。  4秒、4分くらいの余命で、満足を得られるのか疑問だな。  おっと、そろそろ開店だ。 「いらっしゃいませ、4レンタル店へ」 「ここはどこだ!?どうなっている?」  パニックになっているのは、ブルーの手術着姿が痛々しい50代くらいの男だ。  重病なのだろう、顔色は青白く身体はガリガリに痩せている。 「俺は死神だ。あんたはもうすぐ死ぬ、ここまでOK?」 「まさか!成功率70%の手術だから受けたんだ!死ぬわけないだろっ!」  これ、よくあるパターンだ。  家族はどんなに小さな可能性でも、それに縋りたいもの。  20%を70%と偽って、男が助かるように手術を受けさせたって事だな。 「成功率は20%だ。お前はもう死ぬ──が、死神にも温情はある。このサイコロを振って余命をレンタルしろ」
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