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客の震える掌から、黒いサイコロがこぼれ落ちた。
──秒
──分
──時
──日
──月
──年
6つの面に彫られてあるのは数字ではない。
カウンターに転がったサイコロは、コマのようなスピンを見せ、やがてゆっくりと止まる。
──秒だ。
「4秒だ。懺悔の言葉くらいしか吐けないな」
歪んだ客の顔も、言葉にならない雄叫びも、4秒後には消え、残ったのは恐怖に慄く次の客だけ。
「さぁ、サイコロを振れ。後がつかえている」
俺の日常は、こんな繰り返しだ。
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