六甲女子大学物語

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 その上亜矢は、どうも存在感が希薄であるようだった。  中、高校時代、新年度の委員会などで、出席しているのに、  「柳井さんは欠席ですかぁ?」  と言われることが一度ならずあった。さすがに一学期の中頃には覚えて貰えるのだが、そんなことが何度かあると面白くない。  「わたしって、印象薄いんかなぁ」  と妹の有希に愚痴ったら、  「馬鹿に印象強いよりええやん。ものすごく派手な顔してるとかさ」  とあっさり言われ、それもそうかなぁと一応納得したものだったが、そんな地味な顔で地味な人生を送って来た自分が、まるで派手な様子をした華やかな不良であるかのように先生から怒られるというのは、ある意味新鮮な体験ではあった。  御歳三歳の件は、その後の講義の教室に行って友達に、  「なぁなぁ聞いてー」  と、その先生の嫌味たっぷりな言い方を真似して笑いを取って満足したのだった。
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