六甲女子大学物語

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 オオ・ブレネリ!                   1  その水曜日の朝、亜矢は校門のところで少しだけ手間取ることになった。抜き打ちの服装検査があったためである。門に近づいて行く女子の群は一応みな、黒のスーツを着用に及んでいるが、問題はその中である。校則では「白のブラウス」ということになっているが、その色や形態についての考え方は人それぞれであるらしく、もちろん何の問題も無い人もいるが、ちょっと周りを見回しただけでも、黄色のポロシャツの人もいれば涼しげな紺のストライプシャツの人もおり、中には思い切ってフリル付きのピンクのブラウスの人もいた。  亜矢がピンクのブラウスに横目で見とれていると、踵の高いパンプスを履いたその人は急にカツカツと早足になり、数人の先生が立つ門のところに来るや、後頭部のカットの形状からワカメちゃんと呼ばれている食物科の老教授が「君イ」と声を掛けて右手を上げた刹那、脱兎のごとく駆け出した。
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