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8月
8月ー出会いー
夏ももう終わろうかと言う頃。
その命を燃やして喚くセミたちの声が煩い。
冷房の効いた図書館から出た僕に絡みつく湿気。
君と出会ったのも、こんな夏だった。
去年の今頃。僕は来たる受験のために塾の夏期講習へ通っていた。
段々とピリピリしていく友達と大量の課題に悩まされつつ、なんだかんだで充実した夏休みを送っていた。
そんなある日のこと。
校内に貼り出される先の模試の結果。
僕の名前は上の下。503分の48位。
「「あ、少し上がった」」
僕が呟くと同時に隣で声がした。
サラサラな黒髪を肩より少し伸ばした可憐な少女が、そこにいた。
ふと目が合う。その一瞬、自分の姿を映した瞳に僕は恋をしてしまった。
クラスも名前も知らない、一度アイコンタクトしただけの少女。彼女に僕はすっかり心を奪われてしまった。
僕は夏中彼女がどこの誰なのか知ろうとした。
しかし、あれから一度も塾内で見かけることはなかったし、僕もちゃんと情報収集するような暇はなかった。
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