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もし唯が、「仕事関連なら」と不本意ながらも来ざるを得なかったというのであれば。
職務上の立場を利用した強要、つまりはパワーハラスメントと認定されかねない、と冷や汗が出る思いがする。
「私は嫌ならはっきりそう言います。そうじゃなくて、大槻チーフが大変ですねって話をしてるんです」
どうやら取り越し苦労らしいのだけはわかったものの、ではなんなのか。
「……それは、イヤじゃなかったって思っていいの、かな?」
「ええ。そう言ってるじゃないですか。どうかしました? ちょっといつもと違いませんか?」
淡々とこちらはいつも通りに話す唯に、隼人はもうすべて打ち明けてしまおうと決めた。
ただし。
「あの、さ。話はあとで、とりあえず溶けちゃうから飲まないか?」
「そうですね。ここで?」
周りを見回す彼女に、隼人はすぐ目の前の公園を指差す。
「立ったままじゃなんだから。あっちにベンチあるし、あ、外でもいい?」
「構いませんよ。晴れてると今の季節は気持ちいいですよね」
最初からそのつもりで、店内には入らなかったのだ。
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