【3】

4/5
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
 もし唯が、「仕事関連なら」と不本意ながらも来ざるを得なかったというのであれば。  職務上の立場を利用した強要、つまりはパワーハラスメントと認定されかねない、と冷や汗が出る思いがする。 「私は嫌ならはっきりそう言います。そうじゃなくて、大槻チーフが大変ですねって話をしてるんです」  どうやら取り越し苦労らしいのだけはわかったものの、ではなんなのか。 「……それは、イヤじゃなかったって思っていいの、かな?」 「ええ。そう言ってるじゃないですか。どうかしました? ちょっといつもと違いませんか?」  淡々とこちらはいつも通りに話す唯に、隼人はもうすべて打ち明けてしまおうと決めた。  ただし。 「あの、さ。話はあとで、とりあえず溶けちゃうから飲まないか?」 「そうですね。ここで?」  周りを見回す彼女に、隼人はすぐ目の前の公園を指差す。 「立ったままじゃなんだから。あっちにベンチあるし、あ、外でもいい?」 「構いませんよ。晴れてると今の季節は気持ちいいですよね」  最初からそのつもりで、店内には入らなかったのだ。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!