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「でも葛城さんが戻られて、いきなりガツンて」
「葛城さんか。……何て?」
唯は入社三年目で、二十九の隼人より五歳年下の後輩になる。
「パーテーション叩く音がして振り返ったら、『陰口はせめて陰で言いなさい! 聞かされる方が不愉快なの。ここは中学校じゃなくて仕事をするところよ』って。そのあと何もなかったみたいに、坂崎さんに進捗訊いておられました」
いかにも彼女らしい、としか言いようがない。
「あの人、口数は少ないし穏やかそうに見えるかもしれないけど、結構厳しいんだよ」
「そうなんですね。全然知らなかったのでちょっとびっくりです」
「怖かっただろ?」
揶揄うような隼人に、卓也が真剣な表情で返して来た。
「え? いえ、格好いいなと思いました。──若宮や宗よりは、葛城さんの方がずっと大人で素敵ですよ」
「……うーん。その言い方は社内ではちょっと、やめた方がいいな」
確かに対比が明確過ぎるので、その感想もわかる気はする、が。
悪気はなくとも、『女性社員を値踏みする』と解釈される恐れがある言動はよくない。
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