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「あ! あ、はい! すみません、そうですよね」  隼人が呈した苦言も、彼は即理解して反省の弁を述べた。卓也は確かに気弱な印象も受けるが、頭の回転は速いと感じている。 「ただ葛城さんは感情的になる人じゃないから。冷ややかなイメージでも、訊いたらなんでも億劫がらずに教えてくれるよ」 「はい。僕は優しい方だと思ってます」  年齢より幼くさえ見える整った顔立ちには不似合いな、唯の強い視線、辛辣な口調。  時と場を選んでいるようには見えないから、裏表はなさそうだ。  それはそれで社会人としてはどうなのかというのはともかく、言葉は多少きつくても別に暴言というほどではないし、内容も間違ってはいないのだ。  実際、決して愛想がいいとは言い難いのに、彼女が周囲に嫌われているという話は聞いたこともなかった。  だからと言って人気者というわけでもないが、仕事もできるし最低限必要なコミュニケーションはきちんと取れているので問題にするようなことでもない。
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