第一章・新兵器装備完了

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第一章・新兵器装備完了

 登校して、教室に入って席に着き、ランドセルの中身を机の中へと移していたら、後ろの方で数人が騒ぎ出した。  ──何事か?  ぼくは、思わず振り返った。  と、その中の一人が棚を指して喚き散らしている。 「ドッヂボールるが消えた!」  よくよく聞き耳を立ててみれば、クラスで所有しているドッヂボールの二つのうちの一つがなくなっているというのだ。  それを知った皆が一斉に席を離れ、棚を取り囲んだ。  休み時間、使用した者が責任を持って教室に持ち帰り、保管場所に返すとの取り決めが、予め二学期始めのホームルームで話し合われ、これまで皆、それに従って何事もなく遊興三昧の時を過ごしてきたのに、いつしか惰性が高じて、うやむやな管理下で責任の所在も曖昧模糊とした挙句の椿事(ちんじ)出来(しゅったい)であった。  犯人探しが始まると、クラスの誰しもが、知らぬ存ぜぬを押し通し、責任を他者へと転嫁しにかかる。 「昨日の昼休み、最後にボールを触ったのはあんたよ! わたし、目撃したもん」  いつも口やかましい仕切り屋の女子が、“お調子者の悪戯小僧”を指差すと、彼は沸点をはるかに超えた真っ赤な顔面の血走った目を極端に見開き、眉を吊り上げて食ってかかった。  それを皮切りに、男子女子入り乱れての論争、否、小競り合いが勃発し、収拾のつかぬほどの暴動と化してしまった。皆、責任の所在を明らかにせん、と己以外の者へ感情むき出しの疑惑の目で責め立て合った。  そうこうしている間に担任が現れ、一喝した。  二十七歳独身、一七七センチメートルの上背から放った男性的な野太い鶴の一声は効果てきめんで、皆、蜘蛛の子を散らした(てい)で一目散に着席した。  朝のホームルームが始まり、事情をかの仕切り屋のお節介女子が説明して、しばしの話し合いが持たれ、昼休みにクラス総出の捜索という運びに落ち着いた。
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