その生贄姫は旦那さまに奪われる。

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「と、言うわけで、屋敷内に旦那さまのストーカーがいるようです」 夕食後、リーリエは開口一番にそう言った。 リーリエの報告を聞いたこの屋敷の主であり夫のテオドール・アルテミス・アルカナは嫌そうに眉間に皺を寄せる。 「まぁ、犯人の気持ちは分かりますよ?旦那さまはところ構わず色気垂れ流してますし、いつかこんな日が来るんじゃないかと思ってました」 分かるわー魔力の流れ綺麗だし、イケメンだしね!とうんうん頷くリーリエを見て更にテオドールの眉間に皺が深く刻まれる。 「もう、私の事を威圧して殺気振り撒いたってしょうがないでしょう?」 世間で"死神"と呼ばれる人類最強の騎士の怒気を一身に浴びながら、リーリエは涼しい表情を崩さない。 「何で犯人を擁護してるんだ!」 「犯人なりの推し活なんだろうなーって。見てるだけじゃ飽きたらず、ついに一線を越えて………。まぁ愛故に、って奴ですよ」 愛されてますねー旦那さまとリーリエは茶化す。 「……リーリエ、お前楽しんでるだろ」 魔力や使用済みの衣類を盗まれる方の身になれと、イラッとしたようにテオドールがそう言う。 「ええ、もちろん全力で!」 いやーモテる男は辛いですねーと全力肯定でにこにこにこと効果音がつきそうな笑顔でリーリエは応戦する。 政略結婚をしてはや3ヶ月。 "俺と馴れ合おうとするな" と、テオドールに突っぱねられた日から友達のように言い合えるまでの関係になった。 本当に随分仲良くなったものだとリーリエは内心で笑う。 「でも、いくら犯人が旦那さまを好きでも、魔石の魔力が盗まれて屋敷の機動力が落ちるのはいただけません。というわけで、犯人確保にご協力くださいませ」 リーリエはそう言って、テオドールに協力を仰ぐ。 テオドールとしてもモノや魔力を奪われ続けるわけにはいかないので、その点は異論ないが。 「姿が見えず、感知もされていないそれをどうやって捕まえる気だ?」 「感知できないのなら、犯人の方から来てもらえば良いのですよ」 そう言ってリーリエはテオドールに両手を差し出し、 「と、いうわけで旦那さま。今すぐ服をお脱ぎください」 にっこり笑ってそう言った。
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