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烏丸:よぉ、待たせたな。
折鶴:構わないよ。こちらこそ、正月だってのにすまないね。
烏丸:お前が謝ることじゃねぇさ。それに三が日は過ぎてんだ、気にすんな。茶、勝手に淹れていいか。
折鶴:ああ、気が利かなくて悪いね。そうしてくれ。
烏丸:だから、謝ることじゃねぇよ。――話、始めてくれるか。
折鶴:ああ。今回の事件はとても厄介そうでね。正直、私だけでは対処できそうになかったんだ。
烏丸:だろうな。んで、なんなんだ。またヴァンパイアか、それとも
折鶴:蛇だよ。
烏丸:……は?
折鶴:蛇だよ。
烏丸:なんだそりゃ。
折鶴:蛇神が、降り立ったらしい。いや、蛇なら這いずってるのかな。
烏丸:蛇神か……そいつは聞かない事例だな。なんだそれは。
折鶴:君は陰陽師だってのに浅識が過ぎるな。
烏丸:悪かったな。調べんのは嫌いなんだ。じゃなきゃお前とつるんでねぇ。
折鶴:はぁ……今回の蛇神ってのは、恋に悩める者の前に現れ、その恋を成就させるために『林檎』を授ける……らしい。
烏丸:らしい?
折鶴:流石に私も初めてでね。資料を漁ったんだが、それらしいものが全然見当たらなかったんだ。
烏丸:なんだ、お前もわかってねぇんじゃねぇか。
折鶴:な、に、か、言ったかね???
烏丸:い、いや。お茶淹れたぞ。ほれ、おちゃでぇーす……
折鶴:恋に悩める男、あるいは女に、蛇の権能の一部を宿した「林檎」を授ける。授けられた男はアダム、女はイヴとなり、意中の相手を我が物とするために権能をふるう。
烏丸:……そりゃ迷惑な痴話喧嘩なことで。
折鶴:痴話喧嘩とはそういうものじゃないと思うぞ……烏丸、いくら童貞だからといって、それは浅識が過ぎる。
烏丸:童貞はどうでもいいだろうが!!
折鶴:波長がやけに強大でね。それでいて、ほら。
烏丸:ん……こ、こいつは!あ、あー……なんつーか、ぐるぐるしてんな。
折鶴:とぐろを巻いている、と言ったとこだ。
烏丸:これが蛇だとすると、あまりにもデカすぎるな。パンナコッタもひっくり返る。
折鶴:アナコンダ
烏丸:……あなこんだ
折鶴:まあでも、実際にこの大きさの蛇が顕現している訳ではないさ。結界みたいなもの……それも、出入り自由の簡素なものだ。
烏丸:デカい分、効果は薄いってとこか。なら、案外大したことねぇんじゃ
折鶴:広範な結界を展開している以上、厄介なことに変わりはないさ。それに、こう広くちゃ母神体がどこに鎮座しているのかもわからん。
烏丸:そりゃ、真ん中だろ。ここでいうと……
折鶴:神田、日本橋、馬喰町、御茶ノ水……秋葉原ってとこだ。
烏丸:なるほど、大体その辺探り入れればいいんだな。うし、
鷲峯:待て。
烏丸:あん?……ってお前鷲峯!?何でお前がここに居やがる!
折鶴:私が呼んだ……というのは違うか。
鷲峯:折鶴、いい。この男を混乱させても仕方ない。
烏丸:それはてめぇ……俺が馬鹿だって言ってんのか?
折鶴:そうだよ。
烏丸:あぁ!?
鷲峯:烏丸、君の力が必要だ。
烏丸:な、なんだよ急に。
鷲峯:折鶴に蛇の降臨を伝えたのは私だ。蛇の資料も、私が集めたものだ。
烏丸:……なんだと
鷲峯:私はこの蛇の事件を追っている……多分な。だが、私だけでは力不足だ。君達の力が要る……特に烏丸、君の力が。
烏丸:そうかよ。
鷲峯:いいのか?
烏丸:折鶴がいいって言ったんだろ?なら文句はねぇよ。別にお前に力貸すんじゃねぇ、俺と折鶴の仕事に、お前が居るだけだ。
鷲峯:ありがとう。
烏丸:……チッ、さっさと行くぞ!
鷲峯:だから、待てと言っただろう。君の脳はフロッピーディスクか。
烏丸:あぁん!?ピッピー……なんだって?
鷲峯:この蛇の事件には、ある陰陽師が必ず現れると言われている。
折鶴:……?
鷲峯:その陰陽師の情報も全然なくてだな。……というか、曖昧というか、不鮮明な情報ばかりだ。ただ、色素が抜け落ちたような、真っ白い子供……らしい。
烏丸:真っ白……?
鷲峯:肌だけじゃないさ。頭髪も、瞳も……透き通るような真っ白い形をしている。
折鶴:変だな。そんな外見をしているなら、目立ちそうなものだが……
烏丸:……名前は。
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