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 冬を迎えた。沙綾と40代生活課職員、函館のやり取り。  「通所中、電車で痴漢に会うんです」  「そうなんですか」  「その犯人が、佐本急便の配達員として注文するたび、現れるんです」  「そうなんですか」  「その犯人が、吉川という薬剤師で、毎回私の薬の担当をしてるんです」  「名取さん、お薬は飲んでますか?」  沙綾は自宅に帰って泣いた。全部事実だ。彼女は、集団ストーカーの攻撃に遭っている。しかし、その発言をすると、薬を飲んだか聞かれる。  彼女はもう3年くらい、SNSで被害告発記事を書いていた。  キンコーン  自宅インターホンが鳴る。今日は大家堂のネットスーパーに、5キロの米と、他諸々の注文をしている。  成浜市は海があるので有名だが、有田区だけは標高が高く海に面していない。よって、夏暑くて冬寒い。沙綾の地元は坂道も多く、ネットスーパーがないとやって行かれないのだ。  沙綾は、玄関に出た。彼女の恐怖の対象、40代の吉川が立っていた。痴漢で薬剤師の吉川だ。今度は佐本急便ではなく、大家堂、桜アニマルの配達員として現れた。  「よく会いますね」  「偶然です」  吉川はさも働き者であるかのように答え、若い女性の嫌がる笑みを浮かべた。  「入れちゃいますね!」  吉川は沙綾の身体を押しのけて、沙綾宅に上がり込んだ。  「待って!」  「ええ〜? 何ですかあ〜?」  吉川は返事だけして嫌がらせをやめなかった。米を持って、部屋の中を物色。「どこに置こうかなあ!」  角ハンガーに沙綾の下着が下がっているのを発見し、よだれの出そうな顔で沙綾を振り返り「えっへっへ」と笑った。  ゴキン。  瞬間、吉川は米ごと床に沈黙していた。 沙綾が見たこともない若い男性から、コークスクリューを食らったからだ。しかし、若い男性は、よりにもよって沙綾宅のクローゼットから出てきた。  「痴漢!」  「やっ、違う」  「痴漢が二人!」  「違うってば」  「ちょっと凪!何やってんの!」  その時玄関にいた沙綾の後ろから、知らない女性が現れた。痴漢2号と同じ、青い制服姿で、極端に短いポニーテールをしている。  「窓から入ったら感謝されるでしょ!」  「いちいち実弾で破壊できないよ!」  凪と呼ばれた青年が、弱ったように女性に弁明している。  三つ巴の口論となった結果、沙綾は、凪と呼ばれる青年を始め、青い制服の彼らはブルーフェニックスという組織だと理解した。  「武装福祉組織……?」  「はあ、あなたのSNSを拝見しまして。来てみたら痴漢に襲われていた次第」  凪が片手で自分の後頭部をおさえ、ペコペコしながら、腰低く説明。細身長身小悪魔的な容姿が台無し。  「なんでクローゼットから出てくるの?」  「吉川の軌跡を辿って先回りしていたんです」  「まあいいか……」  沙綾はその後、ブルーフェニックスのサポートで、集団ストーカーからの盗撮盗聴、スマホハッキングを全て封じる事ができた。
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