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歯科カウンセラー、広田杏奈は冬のある日から探偵に付け回され、街ぐるみの嫌がらせに遭い、一瞬記憶が飛んで、気がついた時は浜田公立大学病院の閉鎖病棟でベッドに拘束されていた。既に春を迎えていた。
看護師に家族に会いたいと言ったが、全員電車の事故で集中治療室だと聞いた。
杏奈のベッド前に“遠縁の兄”という、青年、仁が現れた。
「私は正常だ。ここから出して」
「うん、まだまだみたいだね」
このやり取りが2週間続いた。
翌週も仁はやってきた。
「自分のことどのくらいわかってる?」
「統合失調です」
「わかったようだね。じゃあ情報提供してあげよう」
その後杏奈は浜田公立大学病院を退院する。更に悪いことに歯が痛くなり、自宅近所で歯科受診した。
「担当の松田先生は現在海外留学中です」
「そうですか」
「代わりに私が担当します」
「よろしくお願いします」
そして、麻酔なしで歯を削られるという、虐待を受ける事になる。
杏奈は治療途中だったが、次に何をされるか恐ろし過ぎて転院した。
新しい歯科はカウンセリングに力を入れていた。杏奈はカウンセラーに被害を訴えた。カウンセラーは信じられないと言った様子。
「ご自宅は近いのですか?」
「いいえ、通院先が近いのです」
「どこですか?」
「明星病院」
「どんな病名で?」
「必要あるんですか」
「そういう時もあります」
「統合失調です」
「あらあ、そうですかあ!」
カウンセラーはたった今大便が出たと言うような醜悪な笑みを浮かべて大納得して見せた。
「キャアァァァァァァ!」
杏奈は悲鳴を上げて飛び起きた。自宅のベッドだった。
寝室の隅に青い制服の青年。マリアが男性になったような容貌の仁と違って、こちらは妖艶で人には見えず、魔族の1人のように見えた。
「誰」
「ブルーフェニックス隊員、御門凪」
彼は続けた。
「あんたね、名取さんに同じ事やったの、覚えてる?」
「私は悪くない。ただ、精一杯カウンセリングを……」
「そう思うなら、カウンセラーと看護師免許をブルーフェニックスが停止する。もう一度、看護学校からやり直しな」
御門は去った。
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