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 函館正樹は、沙綾のカウンセリングをした、区役所生活課職員。  ある冬から探偵に付け回され、その後、街ぐるみの嫌がらせに遭う。一瞬記憶が飛んで、気がついた時は浜田公立大学病院の閉鎖病棟でベッドに拘束されていた。窓の外は春になっていた。  看護師に家族に会いたいと伝えたが、全員電車の事故に遭い集中治療室だと聞いた。  その後、“遠縁の兄”という青年、仁が毎週やってきて、彼に「まだまだみたいだね」と言って去って行った。  5週目になった。  仁は言った。  「自分のことどのくらいわかってる?」  「統合失調です」  「わかればいいんだよ」  正樹は退院した。  その後も街ぐるみの嫌がらせを受け続ける。働けなくなり、生活保護を受給するようになる。生活科の30代女性担当職員に相談に行った。  「通所中、電車の中で痴漢に遭います」  「痴女じゃなくて? あなた男性でしょ?」  「ネットスーパーの配達員から嫌がらせに遭います」  「はあ」  「その配達員が薬局で、僕の担当の薬剤師なんです」  「函館さん、お薬は飲んでいますか?」  「飲んでるに決まってるでしょ!」  正樹はキレた。  「函館さん、落ち着いて、誰か来て!」  正樹は複数の男性職員に取り押さえられ、救急まで呼ばれ、精神安定剤を打たれた。  正樹は一人暮らしだった。自宅に戻された後、悔しくて部屋中を刃物で刺して回った。 更におさまりがつかず、深夜、松明を持って、夜の街を走った。  「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」  正樹は警察に保護された。その後、閉鎖病棟送り。  彼がベッドにがんじがらめに拘束されてると、ある晩、病室に知らない看護師の青年が現れた。細身長身、妖魔のように艶やかな容貌。黒い鞄を斜め掛けにしていた。  「名取さんの気持ち、わかった?」  「あんた、誰だ」  「ブルーフェニックス隊員、御門凪」  彼は正樹の拘束具を、鞄から出した武具で取り外した。  「あんたの退院権は、ブルーフェニックスで保証しよう。でも統合失調患者として戦ってもらうよ」  凪は鞄から更に書類を取り出して、正樹に渡した。  「はい、人権団体の連絡先。期待してるよ。自分に法知識があったことに感謝するんだね」  御門は正樹の病室を出ていった。翌朝、正樹がベッドから降り、そのベッドが鋭器で荒らされてるのを女性看護師が発見するが、問題にはならなかった。まるで何者かがもみ消したかのよう。  正樹はその後、穏便に退院する。その後、ケースワーカーの知識で、自分の人権のために戦わなければならなくなった。
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