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 数日後。    ボルグの借金を肩代わりする男が現れた。    男の名は、ウィル・ローレン・ネヴィル。  同く伯爵の爵位を賜っているが、ボルグにとっては夜会などで顔を会わす程度の相手で、特別な接点はない。  顔が厳つく、戦場で戦う姿は鬼気迫るものがあり、敵には容赦ない冷酷な男だと称されている。彼が、人前で仏頂面を崩したところも、見たことがなかった。  だからなのか、他の女たちも彼には近づかないため、浮いた話は一つも聞かない。 「アメリア殿を、使用人として買い取りたい。金は一括で払おう」  提示してきた金額は、ボルグの借金と同じ額だった。  理由は聞かなかった。  借金がなくなるのであれば、妻の差し出し先が娼館でもウィルでも、どちらでも良かったからだ。  いや、むしろ娼婦に堕ちた妻をまたこの家に迎え入れるよりも、いっそのこと、目の前の男に売った方がいい。  家の存続がかかっている事態なのだ。離縁の理由としても十分だった。  これで、セーラを妻として迎えることができる。  ボルグは快諾した。  自分の要望に何一つ応えられない妻だ。それでよければ、好きにしろと笑いながら。  ウィルは、笑わなかった。  ただ黙って頭を下げると、借金を肩代わりする旨を記載した書類と離縁届を、黙ってボルグに差し出した。  こうしてアメリアは、冷酷とされるウィルの元に、使用人として買い取られることになった。  彼女が発つ時でさえ、ボルグはセーラの元にいて、見送ることすらしなかった。
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