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 変わったのは、料理の味付けだけではなかった。  部屋の整理、バラ園の花、出かける際の荷物の準備など、細かいことをあげればキリが無いくらい、全てが大雑把になった。  注意をした使用人たちは、口を揃えていった。 「アメリア様がチェックをしてくださっていたもので……」 「バラの花は、毎日アメリア様が手入れをなさっていらっしゃいました」 「必要な物は、アメリア様がご指示してくださいました」  もちろん使用人たちも、ボルグの要望に応えようと努力はしているが、どうしても以前のようにはいかなかった。小さな抜けがあったり、気に食わない部分があったり、イライラが募ったボルグに怒鳴られ、次々と使用人たちは辞めていった。  残ったのは、どれだけ怒鳴りつけてもヘラヘラと受け流し、反省も改善も見られない、空気の読めない使用人ばかり。  ボルグはとうとう、妻であるセーラに、身の回りの世話を願い出た。今まで愛人として通っていたとき、彼女はボルグの理想的な妻として、完璧だったからだ。  しかし、 「身の回りの世話? 何故、伯爵夫人である私がそんなことをしなければならないの? ちなみに今だから言うけれど、料理も刺繍も、全て他の人間にさせていたの。まあ夜の生活だけは、私の実力だけれどね?」  爪を塗りながら、セーラは薄く笑った。    頭の中が、だまされた怒りで真っ白になった。  しかし、彼女の膨らんだお腹を見て、怒りを収める。  セーラのお腹には、ボルグの子どもがいた。今更、良妻の仮面を被っていたからと告白されても、追い出すわけにはいかなかった。  アメリアとの間に子どもができなかった以上、セーラのお腹の子が、後継ぎとなるのだから。
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