雪代に浸る

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王都からの決まったルーチンを踏まないとこの水源地施設には入れない。 湖を見下ろした峠から湖まで一刻半をかけておりて行く途中、ルーチンの一つである小さな滝がある精霊の泉で身を清める。 「ああ、気持ちいい……」 頬を少し朱色にしたクリスの甘い声がアレクの下半身に直撃する。 冷たい雪解け水の注ぐ泉の筈なのに、きちんと段取りを踏んでくると、この泉はここまでの疲れを癒やすかのような温水で迎え入れてくれる。 ちらりとその薄く細い身体を見れば数日前にアレクが付けた独占欲の塊である紅い花はもう薄っすらとしか残っていない。 上書きしたい衝動を抑えアレクも湯に浸る。 肌を濡らす今年の雪解け水は調べずとも大空と大地の魔力に満ちているのを感じられる。天候が良ければ大豊作の年となるだろう。 滝の下で身体を清めるクリスはこの湖に現れたという精霊達の様にキラキラと輝いて美しい。 普段は青と緑の混じった瞳の色が、夜半の交わりの時のように、ここに来ると青紫に変わっていくのを見れるのは今やアレクだけだと思うと独占欲が満たされる。 クリスの後、アレクも滝で身を清め、互いに手伝いながら正式な、けれどシンプルな貫頭衣のような太古から伝わる神官衣装に着替えると二人はこれが最後の道のりだと水面に手が届く場所に向かって歩きだした。
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