雪代に浸る

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先程までの軽い口調と異る殺気さえ感じさせる重く冷たい言葉にアレクは息を詰めた。 この気配、確かに只者ではないと今ならわかる。逆にここまで気が付かなかった自分の奢りと愚かさに目眩さえしてくる。戦場ならばすでにアレクに息は無いだろう。 「クリスも、か?」 他のメンバーはなんとなくそうかもしれないという気になるものの、先程までふんわりと話していた庇護欲をそそる少年の様な姿がそんな存在だとはどうにもクリスには納得がいかない。寧ろ魔力の無い研究者と言われた方が納得できる。 「あ、クリスに惚れちゃった系?」 「違うっ!!」 先程までの気配から一転、ロイの急にからかうような言葉に何故か思わず焦って否定してしまう。惚れた訳ではない。研究者じゃないかと思っただけだ。 「否定しなくてもいいんだ。いいんだよ。ここに来たやつはみんなクリスの少年の様な儚さに惹かれちまう。……でもな、クリスは俺達の中でも一番ヤバい奴だ。それこそ甘くみてると」 「……精霊界に連れて行かれるぞ?」 陽気に話していたロイの、最後の最後での先程以上に重く冷たい言葉にアレクは淡い庇護欲の様な感情までもを封じられた。  その後、馬の確認が済むとクリス達の備品確認の手伝いのため鼻歌を歌うロイの後ろについてアレクは無言のまま研究所へと戻った。
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