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ひまわりに執着される女の子の話
自分の心臓が力強く、そして早く脈打っているのを感じていた。私の耳にまで、鼓動が聞こえてきそうな勢いだ。
この時期は、毎年そう。だから、夏は、苦手なんだ──心の音が何を訴えているかを、私は知っているから。
太陽の強過ぎる日差し。木々ならば嬉しげに緑を誇らせれるかもしれない。しかし、残念ながら私は木ではない。だから、喜べず。纏わりつく熱気に嫌気がさす。
私の身体はあちらこちらから、汗を吹き出させていた。それが滴となり、次々と滴り落ちていく夏の感触は、毎年味わっているというのに、いつになっても慣れる気配はない。
私は空へと視線を逃して、暑いなぁだなんて考えていた。あぁ、太陽がまぶしい。
"君だけを見つめる"
それが貴方の花言葉だと知ったのは、いつの事だったか。もう思い出す事はかなわない、はるか昔の事。
花言葉に対し、綺麗だなぁと思うと同時に、私はあの時──…
今年も見事に咲いた大輪の花。濃い青空に映える黄色い花弁が好きだった。
毎年、夏になると必ず咲くその花に、水やりをするのは、幼い時から私の役目だった。
習慣付いてしまったから。今年も変わらず、私は水をまく。
水をまく間もずっと、そこに宿る魂が、私をひたすらジッと見つめているのを感じつつ、私は慣れた動作で水やりをこなしていく。
爛々と輝く烈日を受け、私の身体は鉛が巻かれたかように重たくなっていく。ねっとりとした重い空気が私の身体にまとわりついてくる。
身体は重く、思考は鈍くなっていく中、心の音は逆に強く早くなっていっていた。
ドッドッドッドッドッ
耳に届く音がうるさく、不快でしかないが、収まる気がしなかった。
私の視線は遠くに追いやり、暑い暑い日差しをよこす太陽に、暑いなぁとつぶやく。太陽を見つめるフリをし、私は汗の理由を夏のせいにした。
やっぱり、夏は苦手だ。
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