【α嫌いのΩ】α、お断り

9/15

3175人が本棚に入れています
本棚に追加
/420ページ
(Heat…いや、似てるが、全くフェロモンが発生していない…、これで、こいつがΩ?んな馬鹿な)  一瞬で、今まで読んだ論文を頭の中で総浚いする。 「俺、フェロモン、出ないん、で…」 (…フェロモン分泌不全のHeat?…本当なら、世界遺産並みにレアだな) 「サイガ、血液検査の仮オーダー、ベース型、現状のPr発生値とPrAV、以上、最短で何分だ」 「28分です」 「お前、今まで同じような症状で医療機関にかかったことは?」 「…な、い」 「注射針のアレルギーは?」 「な…」 「サイガ、正オーダーだ。大至急」  かくして。あっという間に採血を終え、検査数値の推移を見つつ、ほとんど意識のない如月の脚の間を撫でた御堂は半眼になった。 (…マジか。キてんな) 「ΩA+…、分泌不全は本当だな。サイガ、点滴用意、YA01を500、15分で落とせ」 「まだ、結果が確定していません」 「問題ない。幸村、利き腕は右?…左か。右に刺すぞ」 「………」  検査開始から10分で、既に、ほぼ如月の意識はない。  御堂は、デスクにあるマウスの形状を見て右腕を取った。開いてあるノートPCにベタベタと貼ってあるステッカーは、お世辞にもセンスがいいとは思えない。  素早く血管に針を入れ、薬を落とし始める。 「あのー、大丈夫ですか」  京都がドアの向こうから声をかけると、御堂はちらりと視線を上げた。暫く時計を見、如月の頬に掌を当てると 「もう少し待ってください」  数分後、薄らと開いた如月の瞳に気づき、御堂はもう一度膝を折った。 「わかるか」  眩しそうに閉じた瞼と僅かに動いた唇を見て、御堂の薄茶色の瞳が細くなった。苦しそうな如月に、 「…キツそうだな」  御堂は低く呟き、そっと如月の首元の髪を避けた。頸に傷はない。 「触るぞ」 とりあえず言い置いて、足の付け根に触れれば、明らかにHeatの反応を起こしている。 (パートナーはいないのか。…誰かとヤっちまえば楽にはなれるんだろうにな。本人にその気がないし、フェロモンの分泌がないから強制的に相手を誘う手段も無く…体だけが反応して体内に熱だけが篭ってんのか。高熱出してるのと変わらねー訳だ。おまけに、アンカーの効きも悪いときた…。難儀な奴だな) 「サイガ、02の200を輸液の残りに追加しろ」 「一部成分の重複投与になりますが、よろしいですか」 「問題ない。早くしろ」
/420ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3175人が本棚に入れています
本棚に追加