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「お前、かかりつけの薬局あんの」
「…まあ、一応」
「どこ」
「…いいじゃないですか。ありがとうございました!」
逃げるように出て行こうとした如月の腕を御堂が掴む。
「何…」
「俺も行く」
「は?」
整った御堂の容貌の半眼に睨まれると、相当なダメージだ。
(く、…苦しい。視線が…)
ぐい、と顔が近づいた。
「お前、飲まねーつもりだろ。つか、薬受け取る気もねえな」
如月の動きが止まる。
(…図星)
「ほら、来い」
「やだ!いい!」
「何言ってんだ。自分のことだろうが」
「大きなお世話だって!」
ぴた、と二人の動きが止まった。
「…」
続けて何かを言おうとした如月が、そのまま俯いた。
「…あー…、すみません。でも、いいんですよ。俺は」
如月は小さく呟き、御堂の指を振り解いた。
「多分…こんなこと、もう起こらないし、そもそもフェロモン出ないから、他人に迷惑はかけません」
御堂は眼を細め、後ろの小さな引き出しから真っ新なカプセルシートを取り出した。
「…お前、調子狂う。自分が辛い思いしないように、とは思わないわけ?」
「ちょうどいいんです、これくらいが」
「…そうなの。それが、命かけることかどうかは、俺には判断しかねることだけどな」
パリ、と一錠破り、如月に見えるように自分の口に入れると、冷蔵庫から出したボトルの水でそれを飲み込んだ。
「…え?」
そのシートを如月に示し、
「好きなの1個取って」
新しい水のボトルを手渡す。
ぱり、と乾いた音をさせ、如月の指が、カプセルシートの角の一つを弾き出す。
「…飲んで」
暗示にかかったように、穏やかに言われるがまま、如月はそれを飲み込んでいた。
「というか、これ何ですか?」
呆れた表情を隠そうとせず、御堂はカプセルシートをしまいながらため息をついた。
「…そーゆーのは普通、飲む前に聞くもんだろ。変な薬でも盛られたらどーすんだ。…明日以降もここへ来て、俺がいいと言うまで飲むと約束すんなら、今すぐに教えてやる」
「え」
一歩後退。
「引くな引くな。如何わしいもんじゃねーよ」
「だって」
(この人、αだった)
今更ながら、明らかな警戒を見せる如月に盛大なためいきをつきながら、御堂は薬品名と登録コードが印字されたシートの一部を如月に手渡した。
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