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「ネットで調べるなり、知り合いに聞くなり好きにしろ。すぐに知りたいなら、さっきのが条件。で、返事は?」
一瞬戸惑い、如月は顔を上げた。
「明日も、来ます」
いちいち調べるのなんて、面倒だ。
ぽふ、とリングだらけの長い指が如月の頭に触れたが、すぐにその手は引っ込められた。
「………」
…何だ、一体。
御堂は思わず如月に触れてしまった自分に疑問を投げつつ、
「滋養強壮剤。お前、栄養状態悪すぎる。そんなんだから、身体が思いもしない状態引き起こすんだよ」
コートを脱いで壁に掛けると、御堂はカウンターの裏へ回った。
「俺もこれからだし、まだなら飯食ってけ」
「へ?」
「この後、予定あんの」
「な、いですけど、…結構です。帰ります」
「夕飯、用意は」
「適当にコンビニででも買って帰りますから」
さっさと靴を履きかける如月を見て、御堂は溜息をついた。ドアに手をつき、如月に顔を近づけた。
「警戒不要だっつの。Ωだからって、男に何もしねーよ。お前、栄養管理できてねーだろ?細っせーくせに、コレステロール高かったし、貧血。大したもんは出ねーから、気にせず食ってけ。上着はその辺に置いて、あっちで手洗え」
ほぼ反論のできない内容で頷かざるを得ず、如月が御堂の姿を追うと、既にシンプルな黒いエプロンをして、何やら調理を開始している。
「あー、…名前、何だっけ」
「…幸村です」
「名前」
「如月?」
ふ、と御堂が如月を見つめた。
「…だったな。キサ、手伝え。手を洗ったら、後ろのキャビネットから、グラスと隣の器、2つずつ持ってきて」
ぎょ、として如月が御堂を見ると、まるで自然体でもうフライパンを混ぜている。
「何で名前」
「知り合いになったんだから、いいだろ」
「…抵抗あるんでやめてもらえます?」
「ああ、酒は出ねーよ。辛いの平気?」
「あんまり得意じゃないです。…俺の話、聞いてます?」
「聞いてる。気にすんな」
(…やっぱり、俺さまα!)
三口のIHヒーターは蓋の乗った鍋とフライパン、スープを煮込む鍋で満杯だ。
かくして、30分程度でテーブルには半熟卵ののったキーマカレーと野菜スープ、彩りの良いサラダが二人分並んだ。
(…とは言え。鍋炊きご飯のキーマカレーとは…)
「半分野菜だし、まだあるから、食べれるならおかわり推奨。はい、座って」
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