【α嫌いのΩ】α、お断り

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【α嫌いのΩ】α、お断り

「…寒…」 思わず、改札を出てすぐに、如月(きさらぎ)は呟いた。 首のマフラーを整え、ポケットに両手を突っ込んで、雪が舞い始め、ぼんやりとした黒い空を見上げてみる。  夜の雪雲特有の空色からサラサラと雪が落ちてくる。 「積もるなよー…」 明日は早いからと、今日は早く仕事を切り上げたけれど。 この辺りで一番大きなこの駅は、如月の自宅から歩いて10分ほどだ。駅を出ると正面にはバスターミナル。通りの向こうには、百貨店。その向こうには、小洒落たショッピングモールが最近できて、クリスマスが近い駅前は平日の夕方だと言うのに、楽しそうなカップルや人を待ってスマホを眺める人々で溢れ、去年までよりも煌びやかになった印象だ。毎年百貨店の入口に飾られる巨大なツリーは、今年も例外なく豪華に飾り付けられてあたり一面をキラキラした世界に変換している。 「…寒っむ…」 幸村如月(ゆきむらきさらぎ)はもう一度低く呟き、百貨店前のそれを一瞥すると、温い笑みを浮かべて足早にその場を立ち去った。  あー、嫌だ。  今年も、この季節が来た。  とにかく俺は、この季節が、大嫌いだ。 如月の自宅は、通りとは反対の方向にある。  いわば、駅の裏通りだが、そのあたり一体はどちらかといえば高級住宅街と言われる価格帯のマンションや戸建が並ぶ。それを少し越えた所に、如月の住むマンションがある。自己負担で住むにはやや負担が大きいが、社宅として会社が借り上げてくれているのでそこはありがたい。 「?こんなところに、カフェなんてあったっけ」 ふと、左の道沿いに、小ぢんまりとした感じの良い洒落た扉と、大きな窓を見つけた。出勤時には全く気づかなかったが、ついこの間までは雑貨店か何かだったはずだ。 「…?」 そっと中を見ると、いかにも女性が目を輝かせそうな洒落た造りになっていて、それこそカフェにしか見えない。如月は思わずドアの前で立ち止まってしまった。 「邪魔」
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