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「あ?ホノがかけたのか?声でかいって。どうした、葉月いねーの?」
『今日ね、おいしいおやつ、たくさん食べたんだよ!葉月があたらしいの作ったんだよ!』
「…これだろ?また山ほど置いて行きやがって…」
プチフールをさせば、
『そー!それ!おいしいよ!あ、キサちゃんだー?』
「へ?」
思いがけず少女から名前を呼ばれ、如月は面食らった。
「ホノ、葉月は?」
『あ、ダディと…、来た!』
ぱたぱたと音がした。
『ちょっと、ホノ!勝手に電話かけないでよ。ごめんごめん、用意してたら、ホノが待てなかったみたいで。…あ、そっちがキサくん?』
「お前らな、紹介する前に勝手に進めんな。皇さんは?」
がちゃ、と音がして、背の高い男性が電話をしながら入ってきた。
『や、すまん』
電話を切って葉月の隣に座ると、絵に描いたような美男美女+愛らしい娘像だ。
す、と御堂が如月の後ろに立った。
「le brouillardのオーナーで、うちの姉貴の夫の久条寺皇さん、姉貴の葉月、娘の仄禾」
『初めましてーー』
「待て葉月!こっちが幸村如月。本人紹介する前に、好き勝手呼んでんじゃねーよ」
『うっさいわね、独り占めすんじゃないわよ!キサちゃんでいいよねー!香哉斗の姉の葉月と、夫の皇、娘の仄禾よー。名前で呼んでねー。あ、昨日は感想ありがとう!指摘が的確で、皇も感心してたのよ。ねえ?』
『うん。ありがとう。連日で悪いけど、もう一つお願いできないかなあ。届いてるよね?』
「すっげー量なんだけど」
御堂のツッコミに、九条寺が一瞬葉月を見た。
『ちょっと待てよ?葉月、どれだけ持ってったんだ』
『試食用にLサイズの箱3つ。あと、キサちゃんのお土産用にM1つと、会社用に3L2つ。会社用のは、焼き菓子のアソートにしたし、日持ちするからいいでしょ』
皇が指でこめかみを押さえた。
『3L、2箱…。葉月、流石に多いだろ、それは。…香哉斗すまんな。明日取りに行くよ』
「いいよ、何とかするから。…ただし、葉月お前、いい加減に一般人の適量っての覚えろよな、お前が異常なんだって自覚しろ!」
「一般人の?」
「こいつの食う量半端ないんだよ」
「あんなに細いのに?」
『うっわ、キサちゃんいい子ねーー!』
「乗るな、馬鹿!」
思わず、如月が噴き出した。
かくして。
映像でお互いの顔を見、談笑しながらのデザートは格別だった。
『…ってとこね。そっか、ありがとう!』
『うん、助かるなー。こっちのこだわりもあるけど、やっぱり食べる側の印象は大事だからね。キサくん、ありがとう』
「いや、そんな」
『あ、香哉斗、invitationまだあるわよね?』
「あと2枚。桜橋んとこのが、まだ渡せてない」
『じゃあ、最後のはキサちゃんに!今度ね、新作発表会するの。良かったら来てくれない?会いたい!』
「もー、会ってんじゃねーか…。それに、面倒だろ」
『実物と会ってナンボよ!ね??』
「はあ…」
『やった!決まりねー、楽しみにしてる!…あ、そろそろベンチタイム終わる。んじゃ、ありがとう、またね!』
『またねーー』
プツ、とあっけなく映像は切れた。
「…ったく…」
はー、と御堂が長い溜息をつく。
「悪かったな。うちの姉貴、あんなだけど、悪い奴じゃないから勘弁」
くす、と如月は思わず笑った。
「あったかくて、いいですね。それに、強引なところとか、御堂さんそっくり」
「あれよりはマシだろ」
「くく…っ、変わりませんよ、その間とか、同じだし」
と如月が腹を抱えた。
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