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引き出しを開けると、中は整然と小物が並んでいる。が、鎮痛剤が見当たらない。
(切らしてたか)
携帯電話を取り上げる。
「…京都ー、鎮痛剤欲しいんだけど。切らしちゃったみたいでさ。手持ちがあったら分けて?」
『何よ、また頭痛?大丈夫なの?』
「なんかね、ちょっと変...。おかし…」
目の前がひどく揺れ、如月はどうにか右手でチェアのアームレストを掴んで耐えた。
「…おかしい…」
『キサ?今フロントにいるの、ちょっと待って...すぐに行くから!』
目の前がホワイトアウトしかけ、如月は椅子から転げ落ちそうになった身体をどうにか支えて床に蹲った。鼓動が早まり、体温が急激に上がりはじめたのが分かる。
「な、んだよ、…これ…っ」
ソファまで這うように移動するとどうにかそこで横になり、リモコンでブラインドを下すとガラスの壁の向こうに影が見えた。
「キサ?入るわよ」
京都は顔を覗かせると、眉を顰めた。
「あんた、Heat起こしてない?」
「な、のかな?…よくわからな…頭痛、酷…」
「医師呼んだ方が良さそうね、すぐ呼ぶ。Heatだといけないから、他のスタッフが間違っても入らないように、部屋私のIDでロックして、医師の入室承認は私がするよ?」
「…頼む…」
「うん」
京都は部屋を出るとドアをロックした。
天井に設置されているセンサーにIDカードをかざし、
「サイガに接続して」
遠隔で提携クリニックに置いてある医療用アシスタントアンドロイドに接続した。
「サイガ、聞こえる?大至急ドクターコールを要請して。対象者は社員番号21013よ」
『サイガです。笹原さん、畏まりました。御堂医師が急行なさいます』
フロアに、訛りのない完璧なアクセントの、穏やかなアンドロイドの声が静かに響いた。
「…御堂医師って、誰?」
再会は、割と唐突だった。
医師だと告げてオフィスへ入ってきた人物に、スタッフがどよめいた。
長身に銀髪、耳には宝石が付いた多数のピアス、えげつないほどに整った容貌。
「…ちょっと、笹原さん、あれ誰」
「佐々木!びっくりさせないでよ。知らないわよ、あんな派手なの」
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